夜、ひとりぼっちで外にいた女の子
先日、会社の後輩と仕事帰りに町中華で夕食をとった後のこと。
帰り際、店の前で立ち話をしていると、店舗の脇の暗がりから小学低学年くらいの女の子がすうっと出てきて、僕達に「こわい、こわいよぅ」と語りかけてきました。「どうしたの?」と聞くと、「さっきタヌキが歩いてたの、こわい」と後輩に抱きついてきます。僕らはしゃがんでゆっくり話を聞くと、夜になって母親がどこかに出掛けてしまい、家の中は1人でこわかったので外にいたらタヌキが出てきてもっとこわかった、とのこと。店の周りはアスファルトに覆われた街中ですが、地方都市らしく近隣に緑が生い茂る公園があり、時々、アナグマやタヌキが出没する話は耳にしていました。それよりも、小さな女の子が夜に1人で外にいることに違和感を覚えました。
母親に放置されていた
女の子は近くにおばさんの家があるから連れてってほしいと、僕達にお願いをしてきます。どうしたものかと後輩と思案していると、店から女店員さんが外に出てきたので相談をすることに。店員さんは、特に驚く様子もなく、「いつものことなんだよね。母親が夜中はずっとどこかに遊びに行っちゃって朝まで帰ってこないんだよ」。ひどい母親だよ、と言って女の子の手を取って、「おばさん」の家まで送っていきました。連れて行くのも、「いつものこと」のようでした。店員さんの話では店の入っているマンションの上の階に住んでいる子どもで、母親と2人暮らしなんだそう。僕らに「バイバイ」と手を振って、去っていった女の子。素直そうな目をしていました。
「これって児童虐待の一種ですよね」と後輩。確かに子供の長時間の放置は虐待です。こんな身近で目の当たりにするとは思いもしませんでした。小動物に怯えるような小さな女の子が、おばの家に連れていってほしいと知らない大人にお願いをするなんて、どれほど寂しかったのでしょうか。母親にも事情はあるのかもしれませんが、親としての責任を放棄しているように感じました。僕には子どもはいません。だから子を持つ親の気持ちは100%はわかりません。でも、母親のやや身勝手な行動に腹が立ちました。
児童虐待相談は年間20万件超
児童相談所で対応する全国の児童虐待相談件数を調べてみると、令和3年のデータでは20万件を超え、過去一番の多さでした。心理的な虐待が全体の約60%で最も多く、次に身体的虐待が約24%と続きます。今回の女の子のケースは多分ネグレクトにあたり、これは約15%と3番目に多い割合です。子どもに対するネグレクトは、保護、世話、養育、などを怠り、放任することを言い、育児放棄、育児怠慢、監護放棄と呼ばれます。
子どもの場合、一人で長期間放置したり、成長に必要不可欠な食べ物を与えなかったりする「身体的ネグレクト」、予防接種や病気の治療を受けさせない「医療的ネグレクト」、情緒的支援をしない「情緒的ネグレクト」、学校へ入学させない、出席させない「教育的ネグレクト」などの種類があり、幼少時期にこういったネグレクトにさらされた場合、適切な親子関係・対人関係が築かれないために、将来の人格形成などに重大な影響を及ぼすと言われています(厚生労働省)。
子育てを学ぶ
僕の幼少時代の記憶は家族がいて、家でみんなでご飯を食べて、テレビを見て、休日はたまにドライブに出掛けてといったようなごく日常的なもので、こうした普通の生活はどこの家庭でも同じだろうと思っていましたが、実はとても恵まれていたのかもしれません。親はしつけに厳しいほうでしたが、勉強や運動はあまり強要せず、思い返せば結構のびのびと育ててくれた気がします。意図的にそうしていたのか、あるいは共働きで忙しかっただけなのか理由は定かではありませんが、虐待がなかったことに感謝しなければなりません。
今は子育てについての様々な学び方があるようです。子どもの成長や発育に関する基礎知識や実践スキル、潜在能力を引き出す方法などアプローチはいろいろ。少しでもこうした知識が一般に広まれば、子を持つ親にとってプラスになるだけでなく、身近で見聞きする虐待への社会的関心もさらに高まるかもしれません。昔は生活がおおらかで寛容な社会だった気がします。隣の家の子どもでもきちんと面倒を見たり、自分の子どもと同じくしかってあげたりするのが普通の時代だったような。しかし価値観が多様化した現代では他人に頼れず、ひとりで子育てに悩み、迷い、結果的に子どもに寂しい思いをさせてしまっている親が少なからずいるのかもしれません。
子育てに関係する学習はどれも心理学をベースにしているようなので、子育てのみならず人間関係の構築にもきっと役に立つはずです。以下は、子どもの育成に関する主な資格です。
・子育て支援員(厚生労働省)
・スクールカウンセラー(文部科学省)
・放課後児童支援員(厚生労働省)
・子供心理カウンセラー
・チャイルド心理カウンセラー
・子育て心理アドバイザー
・育児セラピスト
・認定子育てアドバイザー など