2024年11月7日に9月期の中間決算を発表した日産自動車。アメリカや中国市場での販売不振などから営業利益、最終的な利益ともに90%超の大幅な減益という、その厳しい内容は全国ニュースとして広く報じられ「技術の日産」の凋落ぶりが明らかになりました。個人的には日産の自動車は「いいクルマ」との印象があります。先日、出張先で借りたレンタカーがたまたま「ノート」でしたが、運転のしやすさと安定感は価格以上の価値を感じました。 GT-RやフェアレディZなどのスポーツカーも多くのクルマファンの憧れの存在だと理解しています。
カルロス・ゴーンが関わった目覚ましい復活劇やその後の特別背任の罪による起訴、ルノー、三菱自動車とのアライアンスなど、これまで多くのニュースになってきた日産ですが、今後の展開はどうなるのでしょうか?経営悪化の理由や現時点での評価、今後の戦略についてまとめました。
経営悪化の理由
日産自動車の経営悪化の主な要因
- カルロス・ゴーン事件
2018年にカルロス・ゴーン元会長が逮捕され、これに伴い企業統治や経営方針に大きな混乱が生じました。ゴーン氏の影響力が強かった中での突然の不在が、経営の一貫性を失わせる結果となりました。 - 競争激化
自動車業界全体が電気自動車(EV)や自動運転などの技術革新により大きく変わる中、日産は他社に比べてこれらの新技術の導入が遅れました。特に、EV分野でのリーダー的地位はリーフの成功で一時期確立していましたが、その後の進展が遅かったことが影響しています。 - ルノーとの提携問題
フランスのルノー社とのアライアンスは、一時期日産の経営に大きなプラスとなりましたが、経営方針や投資の優先順位を巡る意見の違いが、両社の関係に亀裂を生む原因となっています。経営の独立性や競争力が課題となり、資本提携のあり方が再検討されています。 - コロナ禍とサプライチェーンの混乱
新型コロナウイルスの影響で、自動車産業は世界的に需要減少と供給不足に直面しました。特に半導体不足が長期化し、日産の生産能力が大きく制約されました。 - 海外での販売不振
近年は主力のアメリカ市場で販売不振が続いており、てこ入れ用の販売費用の増加や、EVシフトが急速に進む中国市場での販売の落ち込みが大きく影響しています。
国際競争力と品質
日産は、業界での評価としてはかつての国際競争力や革新性がやや低下したと見られています。特に、EV技術においてはリーフの早期成功が評価されていたものの、近年はテスラや他の新興メーカーとの競争で後れを取っているとの指摘があります。しかし、インフィニティブランドやSUV市場でのモデルは根強い人気があり、品質や信頼性では一定の評価が得られています。
経営立て直しに向けた戦略
日産は経営立て直しに向けていくつかの戦略を掲げています。
- EVシフトと電動化推進
日産は今後の成長戦略として、電動化へのシフトを加速させる計画です。具体的には、2030年までにEVやハイブリッド車の割合を全車種の50%以上にすることを目指しています。また、固体電池の研究開発を進め、バッテリー技術で競争力を高めることを目標としています。 - 生産体制の効率化
日産はコスト削減と生産の効率化に向け、工場の最適化を進めています。特に国内外の主要生産拠点を見直し、経営資源の集中を図ることで、利益率を向上させる方針です。 - デジタル化と自動運転技術の強化
日産は自動運転やコネクテッドカー技術の開発にも力を入れています。これにより、次世代の移動手段としての自動車を目指し、競争力を維持する狙いがあります。 - グローバル展開の見直し
ルノーとの提携関係の再構築も含め、地域ごとに異なる戦略を展開し、特にアジアや北米での販売戦略を強化する予定です。
日産自動車は、これらの改革により、技術革新とコスト管理を両立させ、企業価値を再び高めることを目指しているようです。
また直近の経営立て直しに関しては、世界で生産能力を20%削減し、9000人の人員削減を行う方針を示しています。
日産車の評価
日産自動車の車両に対する市場での評価には、以下のようなポイントがあります。
電気自動車(EV)分野
日産は早い段階からEV市場に参入し、特に「リーフ」は世界初の量産EVとして高い評価を受けました。リーフは長年、性能や信頼性で定評があり、特に環境意識の高い消費者層から人気があります。ただし、近年はテスラや欧州メーカーの台頭により、競争が激化しています。また、日産は次世代バッテリー技術に力を入れているため、これが成功すれば再び評価が高まる可能性もあります。
SUV・クロスオーバー市場
SUVとクロスオーバー車、特に「エクストレイル」や「キャシュカイ(海外向け)」などは、世界各地で高評価を得ています。これらのモデルは、デザインや快適性、実用性に優れ、ファミリー層やアウトドアを好むユーザーに支持されています。さらに、「ローグ(北米向けエクストレイル)」なども、信頼性と堅実な性能で、堅調な販売を続けています。
スポーツカー市場
日産のスポーツカー「GT-R」や「フェアレディZ」は、日本の自動車文化を象徴する存在として高い評価を得ています。GT-Rは「スカイラインGT-R」から続く伝統的なモデルで、性能と技術が非常に高く、特に車愛好家やスポーツカー愛好家から根強い支持があります。また、フェアレディZも新モデルが登場し、レトロデザインと現代的な性能の融合が評価されています。
大衆車・コンパクトカー市場
「ノート」や「マーチ(海外向けヴァーサ)」など、日産の大衆車・コンパクトカーも評価されています。ノートは、特にハイブリッド車「e-POWER」が燃費性能で高評価を得ており、日常の使い勝手や経済性が評価ポイントです。一方で、デザインや内装の質感が他社と比べてやや保守的と見られることもありますが、安定した品質と低燃費が魅力です。
信頼性とコストパフォーマンス
市場全体の評価では、日産は信頼性やコストパフォーマンスの面で良好な評価を受けています。特に、中古車市場でも日産車の耐久性が評価されており、適正な価格でリセールバリューも高いため、コスト意識の高い消費者に人気があります。しかし、品質に関してはモデルごとに差があるとされ、一部の車種ではリコールの発生頻度が問題視された時期もありました。
技術面での評価
日産は「プロパイロット」などの運転支援技術でも評価を得ています。この技術は、高速道路での長距離ドライブや渋滞時の運転を補助し、ドライバーの負担軽減に貢献しています。また、電動化と共に自動運転技術の開発も進めており、先進技術の導入という点でユーザーからの期待が高まっています。
全体的な市場評価
総じて、日産車は「実用性と信頼性が高く、価格面での競争力がある」と評価されています。特にエコカーやSUV市場でのシェアを強みとしており、今後の技術革新が消費者の関心を引き続き集められるかが鍵とされています。
自動車は日本を支えてきた重要な基幹産業です。海外勢による高級ブランドはありますが、「日本車ブランド」は品質と耐久性において他の追随を許さない絶対的な価値があるとされています。世界に誇れるクルマを作り続けてもらうために、「技術の日産」の大いなる飛躍と復活を期待したいですね。