【医療】がん治療の最前線

学び

2人に1人は何らかのがんにかかると言われている今の時代、「もし自分ががんになったら」とちょっと不安がよぎる時がしばしばあります。実際、アラフォーの僕は仲が良かった2人の同級生を肺がんとすい臓がんで失くしています。
年齢を重ね健康面で気になることも多くなってきたので、自分のためにも改めて最新のがん治療についてまとめてみました。

希望の光?新技術と未来への展望

近年、がん治療は目覚ましい進歩を遂げています。従来の三大療法(手術、放射線治療、化学療法)に加え、免疫療法や分子標的薬など、新しい治療法が続々と登場し、患者さんの予後を大きく改善しています。治療技術は日々進歩していて、こうした新技術は患者さんにとって希望の光といえるのではないでしょうか。

免疫療法

免疫療法は、患者さん自身の免疫力を高めてがん細胞を攻撃する革新的な治療法です。免疫チェックポイント阻害薬CAR-T細胞療法などが代表的な免疫療法です。

免疫チェックポイント阻害薬
近年最も注目されている免疫療法薬です。免疫細胞の表面にある免疫チェックポイントと呼ばれる分子を阻害することで、免疫細胞の活性化を促し、がん細胞を攻撃します。近年、多くの癌種に対して有効性が示されており、標準治療として広く使用されるようになっています。特に、肺がん、腎臓がん、悪性黒色腫、膀胱がん、頭頸部がん、食道がん等において、従来の治療法よりも優れた治療効果が期待できます。

ただ免疫チェックポイント阻害薬は、従来の抗癌剤とは異なる副作用が現れることがあります。代表的な副作用としては、皮疹(ひしん:皮膚に現れる病状のこと)、倦怠感、下痢、甲状腺機能障害、肺炎などが知られています。多くの場合、軽度~中等度であり、適切な治療によって改善されます。

CAR-T細胞療法
患者さん自身の免疫細胞であるT細胞を遺伝子改変して、がん細胞を認識し攻撃するようにする治療法です。T細胞の表面に、癌細胞を特異的に認識する抗体(CAR)を遺伝子導入することで、T細胞ががん細胞を効率的に攻撃できるようにします。

白血病やリンパ腫など血液のがんに対して高い有効性が示されています。特に、急性リンパ性白血病において、従来の治療法では治癒が困難であった患者さんでも、CAR-T細胞療法によって完治を達成できるケースが増えてきました。近年、固形癌(臓器や組織などで腫瘍ができるがんの総称)への応用も進められています。

ただCAR-T細胞療法は、重篤な副作用が現れる可能性があります。代表的な副作用としては、サイトカイン放出症候群(発熱、低血圧、呼吸困難など)、神経学的症状( 頭痛、意識障害、けいれん発作など)です。ただし、これらの副作用も適切な治療によって改善することが可能になっています。

分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わる遺伝子異常をピンポイントで攻撃する薬です。従来の抗癌剤とは異なり、正常細胞への影響が少ないのが特徴です。近年、多くの分子標的薬が開発されており、肺がん、乳がん、大腸がん、腎臓がん等、様々な癌種に対して有効性が示されています。分子標的薬は、従来の抗癌剤よりも副作用が少ない一方で、効果も限定的です。分子標的薬が有効かどうかは、患者さんのがんの遺伝子変異によって異なります。

分子標的薬は、今後さらに進歩し、より多くの患者さんに効果的な治療法が提供されることが期待されています。
個別化医療: 患者さん個々の遺伝子情報に基づいて、最適な分子標的薬を選択する
次世代分子標的薬: より多くの癌種に有効な分子標的薬の開発
併用療法: 分子標的薬と他の治療法を組み合わせることで、治療効果をさらに向上させる

光免疫療法(臨床試験段階)

【光によって活性化される薬剤を用いてがん細胞を攻撃する】
光免疫療法は、光線と免疫療法を組み合わせた治療法の一つです。この治療法では、光感受性のある薬物(光感作剤)が腫瘍組織に投与され、その後、光線が照射されます。光線によって薬物が活性化され、腫瘍細胞を破壊し、同時に免疫系を刺激して、腫瘍に対する免疫反応を増強する効果も期待されます。

光免疫療法の主なステップは次の通りです。
(1)光感作剤の投与
治療の最初の段階では、患者に光感作剤が投与されます。これは、通常、静脈内注射などの方法で行われます。光感作剤は、特定の波長の光に対して感受性があり、光にさらされることで活性化されます
(2)光照射
光感作剤が腫瘍組織に集まった後、光線が照射されます。この光線は、活性化する波長に合わせて選択されます。光が光感作剤と相互作用することで、腫瘍細胞が破壊されます。
(3)免疫反応の促進
光照射によって腫瘍細胞が破壊されると、免疫系が腫瘍組織を攻撃するための信号が増加します。これにより、免疫系が腫瘍に対する攻撃を強化し、腫瘍の進行を阻止する可能性が高まります。

光免疫療法は、他の治療法と組み合わせて使用されることもあります。例えば、化学療法や放射線療法と組み合わせることで、より効果的ながん治療が可能になる場合があります。

ただし、光免疫療法はまだ実験的な段階にあり、臨床試験が進行中です。特定のがんの治療においては有望な結果が得られていますが、まだ十分なデータが蓄積されているわけではありません。そのため、光免疫療法を受ける場合は、医師とよく相談し、適切な治療計画を立てることが重要といわれています。

ナノテクノロジーの利用(臨床試験段階)

【ナノ粒子を用いて薬剤をがん細胞にピンポイントで送り届ける】
がん治療におけるナノテクノロジーは、微小なスケールの物質やデバイスを使用して、がん細胞を標的とする治療法を開発する分野です。これには、薬物送達システム、画像診断、光線療法、熱療法などが含まれます。以下、がん治療におけるナノテクノロジーのいくつかの応用例です。

(1)薬物送達システム
ナノ粒子を使用した薬物送達システムは、薬物をがん細胞に直接送達することができます。これにより、がん細胞にのみ影響を与え、周囲の健康な組織を保護することができます。さらに、ナノ粒子は血液脳関門を通過できるため、脳腫瘍などの難治性がんの治療にも有望です。
(2)画像診断
ナノ粒子やナノ構造体を使用した画像診断法は、がん組織をより高感度で特異的に検出することができます。これにより、早期のがんの診断や治療効果のモニタリングが可能になります。
(3)光線療法
ナノ粒子をがん組織に集積させ、それらを特定の波長の光で照射することで、がん細胞を破壊する光線療法が可能です。この方法は、がん細胞を選択的に破壊することができ、周囲の正常な組織にはほとんど影響を与えません。
(4)熱療法
ナノ粒子をがん組織に送達し、それらを外部からの磁場や電磁波で加熱することで、がん細胞を破壊する熱療法が可能です。この方法も、がん細胞を選択的に破壊するため、周囲の正常な組織を保護することができます。

これらのナノテクノロジーに基づく治療法は、がん治療の効果を向上させ、副作用を最小限に抑えることが期待されています。ただし、臨床応用においてはまだ課題や限界も存在し、今後の研究と開発のさらなる進展が求められている状況です。

マイクロ RNA治療(臨床試験段階)

【マイクロRNAを用いてがん細胞の増殖を抑制する】
がんのマイクロRNA(miRNA)治療は、がん細胞の増殖や転移などの異常なプロセスを調節するために、マイクロRNAを標的とした治療法を指します。マイクロRNAは、細胞内で遺伝子発現を調節するRNAの一種で、適切に発現していない場合、がんの発生や進行に関与することがあります。

がんのマイクロRNA治療には、主に2つのアプローチがあります。
(1)マイクロRNAの過剰発現または欠失の修復
がん細胞では、特定のマイクロRNAが欠失していることがあります。そのため、欠失しているマイクロRNAを補うことでがんの発生や進行を抑制することが試みられます。また、逆にがん細胞内で過剰発現しているマイクロRNAを抑制することで、がんの増殖や転移を抑制することも目指されます。
(2)マイクロRNAを標的とした治療薬の開発
特定のがんにおいて、特定のマイクロRNAの発現レベルが異常であることがわかると、そのマイクロRNAを標的とした治療薬が開発されます。これには、マイクロRNAを直接標的とする薬剤や、マイクロRNAの標的となる遺伝子やタンパク質を標的とする薬剤が含まれます。

がんのマイクロRNA治療は、がんの種類や患者の状態に応じて異なるアプローチがとられます。これらの治療法はまだ実験的な段階にあり、臨床試験などが進行中です。将来的には、特定のがんの治療において有望なアプローチとなる可能性がありますが、まだ多くの研究と試験が必要です。

おわりに

がんは決して克服できない病気ではありません。もちろんまだ100%とは言えませんが、早期発見と最新の治療法を活用することで、多くの患者さんが完治を目指せる時代になっています。今後はAIの導入で研究が飛躍的に進歩し、よりいっそう有効な治療法が確立されていくはずです。

もし、がんと診断された場合、希望を失わず、医師と相談しながら最適な治療を選択することが大切でしょう。

医療事務の仕事に就きたい方

「がんを患った親族がいる」などの理由で、医療関連の仕事を希望する方もいるかと思います。医療関連で最も身近な仕事が医療事務です。医療事務の仕事に就くのに資格は必要ありませんが、以下の資格を取得していれば資格手当などの面で優遇される可能性があります。

診療報酬請求事務能力試験
数ある医療事務関連の資格の中で医療現場において評価がもっとも高いといわれている試験です。
受験や学習に関する最新情報は公益財団法人 日本医療保険事務協会

医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)
受験者数が非常に多く医療事務に関係する資格の中でもっとも認知度が高いといわれている試験です。
受験や学習に関する最新情報は一般財団法人 日本医療教育財団